雛人形にそっと寄り添う花がひと枝あるだけで、部屋の空気はふわりと春めき、ひな祭りの景色はぐっと洗練されます。
大切なのは、豪華さより“調和”。桃や菜の花の伝統に、ユーカリや真鍮の器などモダンなエッセンスをひとかけ。
色は低彩度、形はすっきり、余白を美しく残す——その小さな工夫で、雛人形の品格を損なわず、今っぽさも感じる「和モダン」なフラワーアレンジが完成します。
今年は、主役を引き立てる脇役としての花にこだわって、凛としてやさしい“桃の節句”を迎えませんか。
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和モダンの基本:雛人形と花の「調和」をどう作る?
和モダンは「和の要素(素材・色・余白)×現代的なシンプルさ(線・形・配色の引き算)」の掛け合わせ。
雛人形と花を同時に飾るときは、主役=雛人形、脇役=花の関係を守るのが最大のコツです。
比率:視線の集まる「内裏雛(男雛・女雛)」より高さ・ボリュームを8割以下に抑える。
線と余白:枝物で“縦・斜めの線”を作り、雛人形の顔周りに空間(余白)を残す。
素材感:漆・竹・陶など自然素材の器で品を出し、メタリックは金箔風・真鍮に限定して点で効かせる。
ひな祭りに選びたい花材リスト
生花(旬で長持ちしやすい)
桃(もも):節句の象徴。咲き具合違いを混ぜるとリズムが出る
菜の花:春の黄の差し色。小束でふわっと
チューリップ(一重・八重)/ラナンキュラス:丸みで可憐さ
スイートピー:軽さと香り、ひらひらの動き
ストック/アルストロメリア:ボリュームと持ちの良さ
カーネーション(くすみピンク/生成り):和室にも馴染む陰影
椿(つばき):和格高め。つぼみ〜半開きが上品
枝物・葉物
雪柳・こでまり:繊細な白で輪郭をやわらげる
ユーカリ(ポポラス/ベイビー):グレイッシュで現代的
レザーファン・熊笹:ベースのボリューム調整に
資材・アクセント
水引(淡金・白・薄桃)/和紙(落雁柄・麻の葉)/金箔フレーク少々
組紐・小さな檜扇(ひおうぎ)チャーム:やり過ぎず“点”で
カラーパレット設計:伝統色×現代色
伝統軸:桃色(薄紅)・白・萌黄・菜の花色・鬱金・朱金
モダン軸:グレージュ・スモーキーピンク・セージ・チャコール・真鍮
配色ルール:
ベース(60%):白/生成り/グレージュ
メイン(30%):桃色系(ピンク〜薄紅)
アクセント(10%):菜の花色 or 真鍮(金)
→ 雛人形の装束色と喧嘩しない低彩度を選ぶと上品。
器選びと配置ルール
雛壇(段飾り):最上段の顔まわりは空け、花は一段下または脇へ。
平飾り:雛の前に低丈の花(10–15cm)、後ろに枝物(20–30cm)で奥行き。
ガラスケース雛:ケースの外に置き、映り込みを計算。器はマットで反射を抑える。
器の素材:
漆風(黒/溜/朱)=締まる、格が上がる
陶器(粉引/志野風/白磁)=やわらかい陰影
竹・籠=ナチュラルで軽やか
真鍮トレー=アクセント土台に最適
作り方(3パターンの実例レシピ)
上品ミニマル(所要:15分/省スペース)
花材:桃(1本・分枝)、スイートピー淡桃(3本)、菜の花(2本)、ユーカリ(少量)
器:白磁の小鉢+剣山 or フローラルフォーム
手順
器に剣山を固定(濡らした和紙で縁を保護)。
桃を斜め後方へS字に入れ、高さ=雛の頭頂の8割に。
菜の花で低い三角を作り、前面にふわり。
スイートピーを左右非対称で散らし、ユーカリで足元を整える。
最後に水引をひと結び、結び目は正面から少しずらす。
春爛漫ラウンド(所要:25分/食卓・リビング向け)
花材:ラナンキュラス(5)、チューリップ(5)、雪柳(1/2本)、アルストロメリア(2)、レザーファン
器:低めのボウル
手順
レザーファンで器の縁に緑の輪郭を作る。
雪柳を弧にしてラウンドの外周線を描く。
ラナン→チューリップ→アルストロメリアの順で大小のリズム。
高さは中央をやや高く、外周は低く。直径=高さの半径比で丸さを保つ。
仕上げに小さな真鍮トレーの上へ置いて格上げ。
枝物主役の直線構成(所要:20分/和モダン玄関)
花材:桃(1本長尺)、こでまり(1/2本)、椿(1〜2輪)、ユーカリ
器:黒の角皿+花留め(石/剣山)
手順
桃を45°の斜線で大胆に入れる。
こでまりを反対側へ低く添えてバランス。
椿は水平気味に短く、顔(花芯)が正面を向くよう角度調整。
ユーカリで負の空間をつくり、線の交差点をすっきり見せる。
簡易レイアウト図(上から見た図)
雛人形を守る飾り方の注意点
直射日光NG:裂地やお顔の退色を防ぐ。レースカーテン越しがベター。
湿度と水ハネ:花器の水替え時は雛から50cm以上離して作業。
花粉落ち:椿・ユリ系は雄しべを軽く取るか、受け皿を。
香り:子どもや来客に配慮し、強香は量を控えめに。
ペット対策:低位置には有毒可能性のある花(ユリ等)を置かない。
お手入れと長持ちテク
水は毎日交換+茎を1cm斜めカット(水切り)。
葉や花が水に浸からないよう水面クリアを保つ。
ぬるい部屋では氷1〜2個を花器へ(夜だけ)で水温を下げ持ちUP。
菜の花などの茎がぬめる前に交換・洗浄。漂白剤を1滴/500mlで雑菌抑制。
写真映え・SNS映えの小ワザ
三層構成:前=花、中央=雛、後=屏風や壁。
45°サイド光で立体感。レフ代わりに白紙を反対側へ。
背景の色数を三色以内に絞る(白/木/金など)。
よくある失敗と対処法Q&A
Q:雛が花に埋もれて見える
A:高さを“雛の8割以内”にし、枝先を外側へ逃がす。中央上は空ける。Q:色がごちゃつく
A:ピンクの明度を揃え、黄色は一点集中に。緑はグレー寄りで馴染ませる。Q:和になりすぎる
A:器を白磁や真鍮×白へ。水引は細く短く。Q:すぐ萎れる
A:茎の詰まり(バクテリア)対策に毎日カット+水替え。直射・暖房風は避ける。