愛する人を見送る通夜や葬儀、告別式は、とても厳粛で悲しみに満ちた場です。
そのような場で贈る“供花”には、故人への敬意を表し、ご遺族への思いやりを伝える深い意味があります。
しかし、初めて供花を贈る際には、「どんな形式が適切か」「どのタイミングで送るべきか」「避けるべき色や花はあるのか」など、戸惑ってしまう方も多いでしょう。
本記事では、通夜・葬儀・告別式で供花を贈る際のマナーや注意点を、宗教・宗派に応じた違いも含めて分かりやすく解説します。心をこめた贈り物で、故人への祈りと弔意をしっかり伝えましょう。
通夜・葬儀・告別式における供花の役割とは?
供花は、祭壇を彩るだけではなく、故人への弔意を形にする重要な贈り物です。参列できない方が供えることも多く、故人と贈り主との関係や社会的な繋がりを表す役割も担います。祭壇の両脇に並べられることが多く、ご遺族が花を眺めることで慰めや安らぎを得る大切な手がかりにもなります。供花を贈る行為そのものが、「敬う気持ち」や「お悔やみの思い」を届ける一つの手段です。
供花の基本マナー
適切な贈るタイミングと手配の仕方
供花は、通夜の前日あるいは通夜当日の開始数時間前までに届けるのが基本です。お通夜が始まる3〜4時間前までには斎場に届くように手配するのが理想とされています。
また、遺族が供花を辞退されている場合もあるため、事前に葬儀社や喪主へ確認し、その意思を尊重することが大切です。
名札(立て札)の書き方と注意点
供花には必ず贈り主の名前が書かれた名札を添えます。個人で贈る場合はフルネーム、会社や団体の場合は名称と担当部署・氏名を明記しましょう。連名で贈る場合は、代表者名や「○○一同」といった表現でも構いませんが、故人や遺族が混乱しないよう見やすい配置にすることが望まれます。
個人で贈る?会社・団体名義で贈る?
個人として供花を贈る場合、親族や友人としての弔意を表すシンプルな形式で問題ありません。一方、会社や団体を代表して送る場合には、名札に会社名や役職、部署名などを明記し、たとえば「株式会社○○ ○○部一同」のように表記するのがマナーとされています。
シーン別|通夜・葬儀・告別式での供花の違い
通夜に贈る花の特徴とマナー
通夜では、故人への最初の供花として「枕花(まくらばな)」も選ばれることがあります。枕花は小ぶりな籠花やアレンジが多く、故人の枕元に控えめに添えられます。贈り主が遠方などで通夜に参列できない場合には、枕花として届ける形も適切です。
葬儀・告別式に贈る花の種類と形式
葬儀や告別式では、供花として生花のスタンド花や籠盛りのアレンジメントが一般的です。祭壇の脇や会場入口に飾られ、参列者が故人を偲ぶ空間を演出します。形式や規模によってはピラミッド型、ラウンド型などの形状が選ばれることもあります。
自宅葬や家族葬における供花の配慮
家族葬や自宅葬の場合、会場スペースが限られることが多いため、大型のスタンド花は避けたほうがよい場合もあります。その際には、鉢植えや小さめのアレンジメント、籠花など、スペースに配慮した形式を選ぶと良いでしょう。前もって遺族に相談して、飾る時間やスペースの都合を確認しておくことがお勧めです。
宗教・宗派による供花の違い
仏教(各宗派)での供花の選び方
仏式葬儀では、白を基調とした生花が基本です。菊・ユリ・カーネーション・胡蝶蘭などがよく使われます。一部の地域ではバラも用いられますが、トゲがある品種は避けるのが無難です。
神道での供花マナー
神道葬儀では、供花も主に白い花が用いられることが多く、菊や百合などが伝統的に選ばれます。神饌物(しんせんぶつ)として、花だけでなく供え物を併せて贈る場合もあります。また、胡蝶蘭は必ずしも一般的ではないため、地域や慣習を確認して選びましょう。
キリスト教での供花マナー
キリスト教式では、必ずしも白に限られず、しかし清らかさや慎ましさを感じさせる色の花が望まれます。百合や蘭、カーネーションなどの洋花を籠盛りや花籠で贈るのが一般的です。献花形式として、一輪を捧げるスタイルも含まれます。
避けるべき花・色・形式とは?
派手な色合い・香りの強い花の注意点
通夜・葬儀では、派手な色の花は避けます。特に四十九日前は白系を基本とし、淡い色を少量添える程度にします。香りの強い花(カサブランカ、大輪バラなど)は、会場や参列者に負担をかけることがあるため、遠慮がちに選びましょう。
ラッピングや装飾のNG例
葬儀用の供花では、装飾やラッピングは控えめに、落ち着いた素材を選ぶべきです。
派手な包装紙や装飾リボン、大きな水引などは不適切とされることがあります。弔意を優先し、シンプルで清楚な仕上がりを心がけましょう。
供花のスタイルと相場
スタンド花・アレンジメントの違い
スタンド花は高さがあり、祭壇や会場入口での存在感がある形式です。葬儀会場を一時的に大きく彩る力があります。一方、アレンジメントは籠や花器に入っていて、スペースをあまり取らずに飾れる略式スタイルです。会場の広さや遺族の意向に合わせて選びます。
一般的な価格帯と注文時のポイント
供花の相場は、スタンド花で概ね10,000〜30,000円程度ですが、式場の規模や形式によって幅があります。籠アレンジメントなど小規模なタイプでは、5,000〜15,000円程度が一つの目安です。注文する際は、葬儀の宗教形式・式場スペース・設置可能な時間などを葬儀社に確認し、予算や品種も含めて相談するのが安全です。
まとめ|故人とご遺族に寄り添う、心を込めた花選びを
通夜・葬儀・告別式に供える花は、祈りや思いを静かに伝える大切な贈り物です。そのためには、宗教・宗派や式の形式、場の空間などを踏まえて、種類や色、形式の選び方に慎重な配慮が求められます。お悔やみとはいえ、美しく品格のある花が故人への弔意と、ご遺族への思いを伝える力を持っています。心をこめて選び、贈るその一輪が、悲しみの中にも温かい慰めとなることでしょう。